スポーツあれこれ by 星野恭子

国立競技場のスタンドから見上げた空。撮影当時は、東京パラリンピックの開催中。座席のカラーリングの工夫で観客がいるように見えるが、実は、無観客

東京2020が残したレガシー
<2022年3月まとめ>

※写真上:国立競技場のスタンドから見上げた空。撮影当時は、東京パラリンピックの開催中。座席のカラーリングの工夫で観客がいるように見えるが、実は、無観客

自国開催の東京2020オリンピック・パラリンピックが終わって半年以上が過ぎ、最近、「レガシーだな」と感じることがいくつかありました。ひとつは「オリパラ一体」です。

たとえば、日本肢体不自由者卓球協会が4月1日に発表した、今年度の新強化体制では、日本卓球協会のテクニカルディレクターがパラ卓球も兼務し、さらに、健常者へのコーチ経験豊富な2名が車いすクラスと立位クラスにそれぞれ招へいされました。今後はナショナルトレーニングセンターでオリとパラの合宿が重なれば、交流をはかったり、オリで培った相手選手のデータ収集や分析などのノウハウをパラにも伝授していくなど、まさに「オリパラ一体」の強化がスタートしています。

▼詳しくは…

「オリパラ一体」進む卓球。パラ日本代表監督に健常者代表コーチ経験者が就任!(ノーボーダー/2022年4月11日付)

また、4月9日、10日に行われた「ボッチャ東京カップ」は障害の有無に関係なく誰でも挑戦でき、勝ち進んだらボッチャ日本代表と対戦できるかもしれない、という大会です。2017年に新設されました。

年々、人気が高まっていて、今年も各地の予選会を勝ち上がったチームや芸能界やスポーツ界などからの招待チーム、さらには日本代表2チームに世界最強のタイ代表まで加えた31チームが参加し、熱戦を繰り広げました。優勝は、NECボッチャ部。なんと、決勝トーナメントで、タイ代表、日本代表Aなどを破っての栄冠でした。

広がる、サポートの輪

レガシーのもうひとつは、「競技環境の改善」です。東京パラ後に新たな所属先でリスタートを切った選手も多く見かけます。東京パラ前に、「大会後に今の契約が終わってしまう」と話していた選手たちもいましたが、無事に新天地が見つかっているようです。東京パラでの活躍が大きなプラスとなって、さらなる可能性への期待のように感じます。

さらに、画期的なケースとしては、伴走者など競技パートナーやアシスタントへの支援の広がりがあります。担当する選手と同じ所属先に移籍したり、あるいは契約社員的な待遇で迎えらる人も増えているようです。

これは、東京パラを機にパラスポーツについてより深く知ることができ、競技パートナーたちにもスポットがあたったこと。そして、彼らの献身や努力が選手の活躍には不可欠であり、「スタッフでなく、同じアスリートだ」という理解や認識が広まったことによるものと思います。

こうした環境改善が少しずつでも進んでいけば、パートナー不足改善にもつながるはずです。そうすれば、一人では競技が難しい人たちの背中を押し、アスリートとしての道が広がることにもなるかもしれません。

「東京2020大会があってよかった」ーーそんなことをこの先、何度も思えますように。

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<2022年3月度>
寄稿:
【パラリンピック】異例下での北京冬季パラリンピック。スポーツの力をアピール(ノーボーダー/2022年3月7日付)

【ボランティア】「ニューノーマル時代」のニーズに合致。「アフター2020」をけん引する斬新なボランティア団体(日本スポーツボランティアネットワーク/2022年3月8日付)

【クロスカントリースキー】クロスカントリースキー・川除大輝、金メダルまでの道のり。北京でレジェンドから引き継いだ「エース」の称号(スポルティーバ/2022年3月11日付)

【スノーボード】「毎日をただ生きているだけだった」。スノーボード小須田潤太、パラスポーツとの出会い、二刀流に挑戦するわけ(スポルティーバ/2022年3月13日付)

【パラリンピック】北京パラリンピックが閉幕。「大事なのは平和への希望」(ノーボーダー/2022年3月14日付)

【パラリンピック】[第13回冬季パラリンピック北京大会]パラアスリートの輝きと平和への祈り。パラリンピック北京大会の特別な10日間!(パラスポプラス/2022年3月25日付)

【ボランティア】ラグビーリーグワン初の公式ボランティア組織「Reves Crew」の挑戦(日本スポーツボランティアネットワーク/2022年3月28日付)

【陸上競技】障がいのある人もない人も「まぜこぜ」で競い合う、「オール陸上」初開催!(ノーボーダー/2022年3月28日付)

【陸上競技】「オール陸上競技フレンドリー記録会」が初開催! 障がいの有無も年齢も問わず、ともに競い合う(パラスポプラス/2022年3月31日付)


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■雑誌連載
『月刊・石垣 3月号: パラリンピックのチカラ』=P43「File.30 パラリンピックは”人間の可能性の祭典”~レジェンドが描く共生社会のカタチ 河合純一委員長」(日本商工会議所/2022年3月10日発行)

「パラリンピックのチカラ」
連載バックナンバー


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■ラジオ出演
NHKジャーナル:スポーツ『開幕直前: 北京パラリンピック』(NHKジャーナル/2022年3月3日放送)

Nラジ『北京パラリンピック開催中』(Nラジ/2022年3月8日放送)

Nラジ『北京パラリンピックの振り返り』(Nラジ/2022年3月15日放送)


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■ネットテレビ出演
ニューズオプエド『開幕! 北京パラリンピック』(ニューズオプエド/2022年3月7日放送)

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■書籍
『明日への勇気(輝くアスリートの感動物語東京2020オリンピック・パラリンピック 4)』 (あかね書房/2022年3月10日発行)

車いすラグビー:倉橋香衣選手/トライアスロン:宇田秀生選手/ボッチャ:杉村英孝選手/陸上:佐藤友祈選手/陸上:マルクス・レーム選手



『自分らしさをつらぬく (輝くアスリートの感動物語東京2020オリンピック・パラリンピック 5)』 (あかね書房/2022年3月10日発行)

自転車:杉浦佳子選手/ゴールボール:萩原紀佳選手/マラソン:道下美里選手


⇒『スポーツ歴史の検証:オリンピック・パラリンピック東京2020大会』 (笹川スポーツ財団/2022年3月25日発行)

p165: ブラインドマラソン「チーム・ジャパン」の挑戦と軌跡

p183: パラスポーツとクラス分け

(kh)

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