スポーツあれこれ by 星野恭子

インドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ競技大会のメイン会場内に掲示されていたポスター。「パラスポーツの見方」を分かりやすくデザイン化。詳しくは下記の本文で。

アジアパラ大会の舞台、ジャカルタで感じた「いいね」
<9月度まとめ>

※写真上:インドネシア・ジャカルタで開かれたアジアパラ競技大会のメイン会場内に掲示されていたポスター。「パラスポーツの見方」を分かりやすくデザイン化。詳しくは下記の本文で。

10月6日から13日まで、インドネシア・ジャカルタで開かれた第3回アジアパラ競技大会。4年に1度の「アジア1位決定戦」に、過去最多となる43の国・地域から約3,000選手が真剣勝負を繰り広げました。

日本からも300人を超える過去最多の代表選手が躍動、これまた過去最多45個の金メダルを含む、198個のメダルを獲得しました。

今大会は、さまざまな競技が行われ、各国選手団がみな、選手村に滞在するという「総合大会」としては、日本選手にとって2020年の東京パラリンピック前の最後の大会でした。そのため、競技や生活などさまざまなシミュレーションとしても重要な大会でした。

とはいえ、競技結果などを中心にした大会リポートは、10月15日付でノーボーダーに寄稿した、『アジアパラ大会閉幕。日本は前回上回る198個のメダルを獲得』をお読みいただければ嬉しいです。

ここでは別の目線から、ジャカルタ大会で「いいな」と感じたことをお伝えします。まずは、トップに掲載した写真を見て、「いいな」と思ったことから。キャプションにも書きましたが、これは大会ポスターで、メイン会場だったスポーツ公園内に掲示されていました。横長のポスターには右側に大会のロゴが書かれ、左側には車いすに座り、テニスやバレーボール、アーチェリーをマルチにプレイする人のイラストが描かれています。そして、そのイラストを取り囲むように、キャッチコピーがデザインされています。

私が特に心引かれたのは、このキャッチコピーです。パッと目に入る赤い文字で、こんな英文が書かれています。

"focus on the ability"(能力に、注目して)

でも実は、よ~く見ると、小さな黒い文字も書かれていて、全文は以下のようになります。

"don’t focus on the disability"(障害に、注目しないで)

英語ならではの言葉遊びですが、パラスポーツやパラアスリートを観るときの、2つの心がまえをうまく表現していて、「いいな」と思いました。

たしかに、パラアスリートたちはよく、「できないことでなく、できることに目を向けて」と言います。障害によって、「できないこと」「難しいこと」はあるけれど、「できること」「得意なこと」「スゴイこと」もある。そこが、"パラスポーツの見どころ"でもあります。

このキャッチコピーを見て、「そういう目線が大事」と改めて実感したのでした。

もう一つは、競技会場での出来事です。ジャカルタでのパラスポーツの認知度や普及度は、「まだまだ」と聞いていました。実際に、ボランティアや観客の何人かに声をかけてみたら、「初めて関わる」「初めて観る」という人たちが圧倒的でした。

でも、だからこそ?でしょうか。会場での盛り上がり方が、「いいな」だったのです。会場には予想していた以上に多くの観客が訪れていて、しかも「スポーツイベントをシンプルに、でも、心から楽しんでいる感」がありました。

インドネシアではバドミントンが国技ですが、パラバドミントンも大人気。多くの観客を集めていました。陸上や水泳、車いすバスケなども満員ではないけれど、声援が大きく熱く、よいパフォーマンスには大きな拍手を送っていて、取材する私もうれしかったし、選手たちもきっと励みになったことと思います。

さらに、観客は老若男女さまざまでしたが、なかでも「若者たち」の姿が目立っていて、活躍した選手への声援はまるでアイドルに注がれるような"黄色"だったのです。

なんと、優勝したある日本の陸上選手には、いわゆる"出待ち"するファンたちの姿まで! 一人に尋ねてみたら、前日の予選での走りを見てファンになり、「がんばってください」と日本語で書いた手旗まで用意して、2夜連続で観戦に来たそうです。それも、一人や二人ではないのです。

そして、その選手が表彰式を終え、金メダルを胸に姿を現すと、辺りはもう、「うわ~」「きゃ~」と興奮状態。選手の動きに合わせ、後ろをつかず離れず行列するファンの皆さんたちの姿は、"うれしいサプライズ"でした。

実は、別の競技会場でも同様に、特定の選手に黄色い声援を送る若者たちをたくさん見かけました。プレーを見てお気に入りのアスリートを見つけて、「かっこいい〜」と応援するジャカルタの人たち。

そうした様子を見て、「これ、いいね。うらやましい~」と強く思ったのでした。 2020年に向けて、日本でのパラスポーツの認知度もかなり上がってきているとは思いますが、こんな風にパラアスリートがアイドル視されるような状態はまだほとんど見られませんから……。

ジャカルタ大会自体の運営や施設等には課題も少なくなく、大変な思いをした選手たちやスタッフ、我々メディアも少なくありません。でも、ジャカルタの人々は優しく、明るく、熱かったです。

いろいろ気づかせてくれたジャカルタ・アジアパラ大会に、心から「テレマカシ」(ありがとう)の思いです。


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10月前半のジャカルタ取材で遅れましたが、<2018年9月度>をまとめました。
■寄稿:
⇒【陸上競技】四国初開催のパラ陸上日本選手権、5600人のエールが選手の力に!「2020年以降」へのヒントにも!(スポーツニュース/2018年9月5日付)

⇒【ボランティア】「#2年後の夏―2020年東京大会を動かすボランティア」日本財団ボランティアサポートセンターからの提言(ボラサポ/2018年9月6日付)

⇒【パラリンピック/トライアスロン】東京2020パラリンピック」で、22競技540種目の実施が決定。その裏にあるパラアスリートを取り巻く現状(ノーボーダー/2018年9月10日付)

⇒【ボランティア】「地元だから」をきっかけに知った、ボランティアの楽しさややりがい(ボラサポ/2018年9月11日付)

⇒【陸上競技】始めて半年で国際大会優勝。パラ陸上に現れた超新星、井谷俊介はまだまだ伸びる(スポルティーバ/2018年9月27日付)


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■寄稿:「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2018」大会PR用特別号毎日新聞/2018年9月中旬より配布)

 *篠田麻里子さんと福家育美選手(車いすクラス)の対談や、大会の見どころなど


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■ラジオ出演:
特集一本勝負『“2020年”の後を見すえて ~パラスポーツを通して考える』(Nラジ/2018年9月26日)

 *車いすバスケ元日本代表の根木慎志さんとご一緒させていただきました。11月26日まで、上記サイトから録音放送がお聴きになれます。

(kh)

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