スポーツあれこれ by 星野恭子

障害のある人たちが気軽にスポーツと出会い、楽しむための入り口にーーそんな役割を目指す、東京都障害者総合スポーツセンター(東京都北区)

2020年、パライヤー幕開けに思うこと
<12月度まとめ>

※写真上:障害のある人たちが気軽にスポーツと出会い、楽しむための入り口にーーそんな役割を目指す、東京都障害者総合スポーツセンター(東京都北区)

4年に1度のパラリンピック開催年が幕を開けました。しかも、母国で開かれる、東京パラリンピックです。それこそ「スペシャルな年」だからこそ、いい年にしたいし、しなければ!という思いです。

そんな年のスタートに、たまたま所用で、東京都北区にある東京都障害者総合スポーツセンター(写真)を訪問しました。その名の通り、障害のある人たち専用のスポーツセンターで、体育館やプール、トレーニング室に、屋外には陸上のトラックやテニスコートなどもあります。ボッチャやゴールボールのコートやサウンドテーブルテニス(視覚障害者の卓球/STT)用卓球台や各種用具などのレンタルもあります。

また、障害者スポーツの指導員資格を持ったスタッフも多数常駐し、サポートを受けながらスポーツを楽しむことができる施設です。東京都外の人も利用可能で、食堂や宿泊施設などもあります。

実際、私が訪問した日も早朝から多くの利用者で賑わっていました。車いすの人、白杖を持つ視覚障害者、手話でおしゃべりする人などなど、カラフルなスポーツウェアに身を包み、思い思いに汗を流していました。

この施設は、公益社団法人東京都障害者スポーツ協会が運営しており、都内にもう一カ所、国立市にある多摩障害者スポーツセンターも運営しています。両施設とも障害のある人たちが気軽にスポーツを始められるように「スポーツの入口」を提供することを目的として創設されました。

同協会のHP情報によれば、2019年3月時点で東京都福祉保健局から障害者の手帳交付を受けている東京都の障害者は約70万人にいらっしゃり、対して、2019年度年間に東京都障害者スポーツセンター(2施設)を利用した人はのべ約17万人、また、年度末の利用登録者数は約7万人(都外在住者含む)だったそうです。

この利用者数は多いのか、少ないのか・・・。もちろん、健常者の中にもスポーツをしない人も大勢いますし、この数字だけで障害のある人のスポーツ参加率を判断することはできません。ただ、障害のある人が気軽に使えるスポーツ施設がもう少し数があったら、身近に利用しやすいところにあったら、スポーツを楽しむ機会も、楽しむ人も数は増えるのではないかなと思ったりしました。

全国に目を向けると、2018年に笹川スポーツ財団が行った調査によれば、障害者専用、または優先のスポーツ施設は全国で141施設あるそうです。都内にも上記2施設に加え、4カ所がリストされていました。他の46道府県にもそれぞれ少なくとも1か所はあるようですが、この数で利用者のニーズに応えきれているのかどうか…。

障害者専用・優先スポーツ施設に関する研究2018(抜粋版)

民間のスポーツジムでの受け入れがもう少し進むといいのですが、「危険」「サポートする人材不足」などを理由に、障害のある人はなかなか受け入れてもらえなかったり、公共の体育館でも「床に傷がつく」などで車いす競技での使用が断られたり。「練習場所を探すのが大変」という声はパラリンピックを目指す選手からも聞こえてきますから、一般の人たちはもっと大変なはずです。

間口が広がらないと、頂点だって高くなりません。新年早々、こうした課題について改めて思いを馳せることとなりました。

2020年――トップアスリートたちに注目が集まるだろう年だからこそ、何ができるのだろう、何をすべきだろう。もう少し広い視野と長い視線で、パラスポーツを見つめたい、見つめなければ! スペシャルな1年の始まりに思ったこと。ここに記しておきます。

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<2019年12月度>
■寄稿:
⇒【パラスポーツ】躍動するパラアスリートたち。11月のパラスポーツ大会の結果から(ノーボーダー/2019年12月2日付)

⇒【ゴールボール】ゴールボールの「アジアパシフィック王者」として、東京パラに出場できるのはどのチームだ?(パラスポ+/2019年12月4日付)

⇒【ブラインドサッカー】ブラインドサッカー日本代表、モロッコ代表に完敗。ぜひ、貴重な経験に!(ノーボーダー/2019年12月9日付)

⇒【陸上競技】ゴールボール日本女子、3連覇達成。 攻守の要の新戦力が自信をつかむ(スポルティーバ/2019年12月15日付)

⇒【ゴールボール】ゴールボール日本女子が「アジア女王」に。男子も銅メダル獲得!(ノーボーダー/2019年12月16日付)

⇒【東京2020】開幕まで250日あまり。「東京パラリンピック」の準備状況の今(ノーボーダー/2019年12月16日付)

⇒【ボランティア】ラグビーワールドカップで実感したボランティアの力。東京2020大会からその先へ!(日本スポーツボランティアネットワーク/2019年12月26日付)


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■雑誌連載:
『手をつなぐ:みんなで応援しよう!東京2020パラリンピック」=P48「file.5 感謝の思いを力に変えて!」(全国手をつなぐ育成会連合会/2019年12月1日発行)


『月刊・石垣: パラリンピックのチカラ』=P11「File.3 アシスタントと二人、本気で目指す世界一! 高橋和樹選手」(日本商工会議所/2019年12月10日)




■新聞寄稿:

『新潟日報 Otona+』東京パラ出場賭け挑戦ー卓球 美遠さゆり選手(新潟日報/2019年12月27日)

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■講演:『東京パラリンピックを楽しもう!』(東京富士大:オリパラ学/2019年12月17日)

(kh)

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